学校生活｜ニュース

新型コロナウィルス感染症対策の一環として、始業式は教室で行いました。２・３年生は新しいクラスメート、新しい担任と一緒に、校長先生の式辞に聞き入りました。

　　令和２年第１学期　始業式　校長式辞　
要旨
Ⅰ　歴史のなかの感染病　～ロミオとジュリエットから～
  英国のウィリアム・シェイクスピアの作品、ロミオとジュリエットを知っていますか？バルコニーのシーン「おお、ロミオ、ロミオ。どうしてあなたはロミオなの？」が有名ですね。バルコニーで愛を語るシーンは、英語で読むと韻を踏んでいて、詩を読んでいるみたいで、リズムがあってとても綺麗です。
　１４世紀のイタリアが舞台です。長年対立するモンタギュー家の一人息子ロミオとキャピュレット家の一人娘ジュリエットとが恋に落ち、秘かに結婚します。しかし、直後に悲劇があって、二人はバラバラになります。悲しみにくれるジュリエットに対して、親からお金持ちの人との結婚を命じられます。そんなの嫌ですから、ジュリエットは、ある計画を思いつきます。簡単に言うと、死んだふり戦法です。仮死状態になる薬を飲んで、土葬ですから、葬儀までを終えて、後で目ざめたところで駆け落ちするという計画です。この計画を書いた手紙をロミオに送りました。ところが、ロミオにその手紙が届くことはなく、仮死状態のジュリエットを本当に死んだと思ったロミオは、彼女の墓の前で自殺するのです。仮死から目覚めたジュリエットも、ロミオを失った悲しみから、後追い自殺します。　さて！では、なぜ、ジュリエットの手紙が、ロミオに届かなかったでしょう？
　それはこの手紙をロミオに運ぶ使者が、途中でペストの患者さんに遭遇し、その患者さんとともに家に閉じ込められてしまい、足止めを食らったのが原因です。ペストが物語の鍵となる…当時の時代背景が浮かんできますね。
　３年生は受験勉強でなかなか時間が取れないかもしれませんが、２年生は是非ともまとまった読書に励んで欲しい。１冊読めば、また次が読みたくなる。２冊読めば、さらにまた次を探したくなる。そういうサイクルになれば良いですね。特に皆さんのような若いころに読んだものはずっと一生記憶に残るものなんです。まとまった時間があるこの機会に、是非読書に励んで、多くのことを歴史から学んで欲しいというのが第１のメッセージです。

Ⅱ　トイレットペーパーは何故消えたのか？
　２月末、全国の店頭からトイレットペーパーが一斉に消えました。買い占めですね。何故そういう現象が起きたのでしょうか？これまでは、「中国から輸入できず、品切れになる」という１本のデマ投稿が原因だとされています。しかし、その後のデータ分析で、このデマのリツイートは１件のみだったそうです。問題なのは、それから数時間後、善意のつもりで「デマを打ち消そうとする」投稿が次々と広がり、ツイッターの話題上位に上がった。そこから、紙製品の品薄を知らせる注意喚起の書き込みが急増した。２日間でデマを否定する善意のリツイートが３２万件に及んだ。これが全国規模の騒動に発展した理由だという記事が日経新聞（４月６日付）に掲載されていました。「偽情報を打ち消す各個人の投稿が逆に品不足を連想させた。」というのが本当の理由なのだそうです。
　このことから、私たちは、軽く追随するのではなく、冷静さを失うことなく、情報を見ぬく目、真実を見ぬく目、本質を見抜く眼を持つことが大切だということが分かりますね。

Ⅲ　ニュートンと創造的休暇
　１７世紀のイギリスです。１６６５年、アイザック・ニュートンは「万有引力の法則」を発見し、「微分積分の考え方」を編み出しました。当時、ロンドンではペストが猛威を振るっており、ニュートンが在学していたケンブリッジ大学も休校に追い込まれました。彼はペストから逃れるため、故郷の田舎に戻ることとなり、思索に充てる時間が生まれました。そして、この１８か月間の休暇中に、万有引力を始めとする「ニュートンの三大業績」が生まれたのです。ペストによってもたらされたこの期間を、ニュートン自身が「創造的休暇」と呼んでいます。ニュートンのこの創造的休暇のごとく、今の私たちにも禍を転じて福となす智慧と工夫が求められています。皆さんとともに、この期間を価値あるものに変えていきたいと思っています。

Ⅳ　最後に
　新型コロナウィルスの感染拡大は止みません。お茶の間で笑いを振りまいていた志村けんさんが急逝されました。ドイツのメルケル首相も感染。幸い退院されましたが、イギリスのジョンソン首相も重症化し、集中治療室に運ばれています。有名スポーツ選手や芸能人も陽性が確認されています。この恐ろしい病気の脅威から、誰も無縁ではありません。
　昨日（７日）は、７都府県を対象に緊急事態宣言が発令されました。海外メディアからは罰則がない宣言は見せかけに過ぎないと酷評されていますが、私たちは罰則がなくてもやれるんだという誇りを示していきたいと思います。まずは、私たちひとりひとりが、心を平静に保ち、感染予防策に耳を傾け、ウィルスを抑え込む努力を自発的に続けていきたいと思います。いつなんどき誰が感染するか分かりません。憶測でものを言ったり、噂をしたり、中傷したり、差別やいじめにつながるような言動は決して許されません。その点については、くれぐれも配慮してほしいと思います。
　最後に、自分のこととして、自分自身と大切な人の命を守らなければなりません。そのうえで、この期間が失われた時間としてではなく、振り返った時に、あの時間があってこんな価値あることができたと思えるような生活（創造的休暇）を、みんな一緒に続けていきましょう。