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教科横断型授業のシステム化

2024年08月02日


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2024年08月02日

教科横断型授業のシステム化

 長谷雄草紙は永青文庫に所蔵される南北朝時代の絵巻物です。この絵巻物を漫画にするという授業を美術科1年美術探究(SSH学校設定科目)の授業で行いました。(HP美術科のコーナーでも紹介)

 主人公の紀長谷雄は平安時代前期の文人官僚で、菅原道真とも縁が深い人物です。この絵巻物では、人間に化けた鬼と双六で賭けをし、勝った証として絶世の美女を送られます。ただし、100日間絶対に触ってはダメという条件付きです。もちろん、長谷雄は我慢できず80日を過ぎた頃、美女に触れてしまします。すると、彼女は水となって流れてしまいました。実は、この女性は鬼がたくさんの死体の中からきれいな部分を集めてつくったもので、100日後には本物の人間になるはずであった、今で言う「人造人間」のようなものでした(人造人間自体はギリシャ神話など海外の伝説や「撰集抄・高野山参詣事付骨にて人を造る事」にもありますね)。

 現代の映画や漫画の題材になりそうな、この平安時代のSFファンタジー的作品は、きっと生徒たちのいい教材になると感じ、教科横断型授業として取り組んでみました。本校SSHでは理系・文系を問わず、科学的な視点から探究型授業を構築することを実践しています。今回は全て文系教科ですが、題材を各教科の視点で「分解」し、作品として「再構築」するプロセスが、彼らの科学的に探究する思考を養うものとして位置づけています。

STEPゼロ★この授業でやりたいことを決める

 「長谷雄草紙の世界観を現代の視点で再解釈したい!」

STEP1★仲間集め

 古典の先生に交渉⇒快諾(ありがとうございます)。教員同士の日々の情報交換が大事と感じました。

STEP2★目標設定

美術探究⇒絵巻物の特徴を理解する(吹き抜き屋台、引目鉤鼻、異時同図法)など。「絶世の美女」をどう表現するか?文化的な解釈も学ぶ。

古典⇒文学史的な理解を深めつつ、文法事項の定着を図る

美術⇒漫画制作をとおして、主題を生成すること、内容に適した表現を選ぶ

STEP3★授業時数の設定

・1学期期末考査後のそれぞれ2時間程度なら可能と相談

STEP4★計画、教材作成

美術探究⇒きっかけとなった熊本県立美術館展覧会パンフレットの準備、及び使用許可

※当時の熊本県立美術館HPはこちら(教材としての使用も含め、熊本県立美術館の許諾をいただいています)

[2021年度7月17日~9月12日]細川コレクション 絵巻、楽しい! - 熊本県ホームページ (pref.kumamoto.jp)

古典⇒ワークシートの展覧会展覧会パンフレットに掲載された吹き出し部分を活用し、台詞を考える。)

美術⇒アイデアスケッチ、制作(A4一枚)

STEP5★評価方法を決める

美術探究【アウトプット】口頭の発表、感想(Classroom)⇒【評価】絵巻物の表現の特徴を理解できているか。自分の表現に応用できたか

古典【アウトプット】ワークシートの提出、添削指導⇒【評価】物語の流れと台詞の整合性、文語による表現が適切か

美術【アウトプット】漫画の提出⇒【評価】物語の本質をつかみ、表現しているか

STEP6★発展(今後この経験をどう活かすか)

美術探究⇒今後、狩野派や琳派と日本絵画史を中心に学習

古典⇒夏期講習等で文法事項を復習

美術⇒夏休みの自由制作でのテーマ設定や構想に応用させる

★生徒の作品より授業の振り返り

↓長谷雄の心情を中心に表現したもの

ガラスが割れるような表現で、二人の関係の終わりを表現した作品

自分の手の内からにゅるりと滑り落ちていく様子で、失ったものの重さを表現

↓美女の最後の瞬間を繊細に表現

この時の台詞は

口語:「私、綺麗だから触りたくなっても仕方ないね」

文語:「我、いと愛しきてせんなし」

添削後:「我、いと艶なればせんなし」

 生徒たちの多くは二人が過ごした80日にきっと心の交流があったのでは?と想像し、その関係の終わりを想像した表現になっていました。長谷雄の不実への切ない思いと許しが同居した表現に、物語から自分なりの「核」を引き出したことがわかります。

 この経験が生徒たちの学習をさらに深化させていくとと思います。

 

 

 

 

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